絵を描く著者の周りに集まる、中国・甘粛省の子どもたち(写真提供:ヤマザキマリ)
中国で打ち出された「宿題や学習塾を禁止する」という政策についての記事を読んだマリさん。人々へ”ゆとり”を推奨する背景に、風通しの良くない思惑の存在を感じたそうで――。(文・写真=ヤマザキマリ)

世界に波紋を広げた中国の教育政策

おととしの夏、少子化が進む中国で、宿題や学習塾を禁止するという教育政策が打ち出され、世界に波紋が広がった。

私が見た記事によると、幼稚園児に円周率を100桁まで覚えさせる塾が流行るなど、「努力は結果を生む」という国民の絶対的な信念と学歴重視に、少子化問題との因果関係を見出した、その解決策である、とも書かれていたが、この通達が出てからわずか数ヵ月のうちに中国国内の学習塾や教育支援産業は壊滅状態に陥り、塾の講師など高学歴の人材が失業を余儀なくされる事態となった。

政府としては、競争をあおる教育ビジネスが大きな力を持つことへの危惧も当然あったはずだが、どちらにせよ人々に“ゆとり”を推奨する姿勢の背景には、なにかしら風通しの良くない思惑が蠢いているものだ。