現代の労働のあり方が、労働者に大きなストレスをかけている

また、現代の都市部では地域のつながりも希薄だ。マンションの隣に住んでいる家族の名前を知らないのは普通だし、自分の家の生活で手一杯で他人の家のことにまで考える余裕がない人の方が多数派だろう。

仕事や生活の中でストレスを抱え、地域のつながりも希薄で、企業の支援も得られにくいということになれば、精神的に追いつめられる人が増えてもおかしくはない。

図(3–5)は、労災補償における精神障害の状況を示している。

図3-5:精神障害の労災補償状況(図:『君はなぜ、苦しいのか――人生を切り拓く、本当の社会学』より)

労災とは労働者が、労働によって被った病気などをいう。精神障害が世間に認識され、医療機関が増えたとはいえ、90年代半ばから現在に至るまで右肩上がりの状況がつづいているのがわかる。

この図は現代の労働のあり方が、労働者に大きなストレスをかけていることを物語っている。以前の記事で見たように、グローバル化、マニュアル化、複雑化した労働についていけない人たちが、心を病むということが起きているのだ。