君たちの親世代の人たちが置かれている状況

さらに言えば、うつ病などの精神障害は職場環境に加えて、生活環境が及ぼす影響も大きい。

たとえ会社の仕事がストレスフルであっても、家庭が羽を伸ばして何でも話せる場であれば、心のゆとりが生まれるだろう。だが、家庭まで窮(きゅう)していれば、ストレスは倍増し、押しつぶされてしまう。

君たちの親世代の人たちが置かれているのは、まさにそうした状況なのだ。

言わば、社会の急激な変化についていけなくなった大人たちが心を病み、生活のことにさえなかなか手が回らなくなっているのである。

※本稿は、『君はなぜ、苦しいのか――人生を切り拓く、本当の社会学』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


君はなぜ、苦しいのか――人生を切り拓く、本当の社会学』(著:石井光太/中央公論新社)

日本の子供が感じている幸福度が、先進国38カ国のうち37位。子供のうち7人に1人が貧困、15人に1人がヤングケアラー、児童虐待の相談件数は年間20万件、小中学生の不登校は24万人以上、ネット依存の子供が100万人を突破……。子供たちを覆う息苦しさの正体とはいったい何なのか。貧困と格差をどう乗り越えるか、虐待する親からどうやって逃げるか、いじめはなぜなくならないか、マイノリティーといかに向き合うか……。子供が直面している困難の正体を見極めたうえで、マイナスをプラスに変える処方箋を提案する。