作家の石井さんは子どもたちに向けて「この20年で進んだグローバル化・情報化と格差の関係を知ってほしい」といいますが――(写真提供:Photo AC)
子供が感じている精神的幸福度が、先進国38カ国のうち37位とされた日本(ユニセフ「レポートカード16」の「子どもたちの幸福度ランキング」より)。現実を見れば、子供のうち7人に1人が貧困、15人に1人がヤングケアラー、小中学生の不登校は24万人以上といったデータもあるなど、多くの子供たちが息苦しさに覆われているのは事実かもしれません。作家の石井光太さんはそんな子どもたちに向けて、「この20年で進んだグローバル化・情報化と格差の関係を知ってほしい」といいますが――。

グローバル化とユニクロの例

2000年代に入ると、新しい社会システムは加速度的に大きなものになっていく。後押ししたのは、世界中で同時多発的に起きていたグローバル化と情報化だ。

この頃、世界は交通網や情報網の発達によって急激に距離が縮まった。市場経済化が進む中で、人間と物が大量かつ自由に行き来できるようになり、ビジネスが世界を舞台に展開されるのが当たり前の時代になった。

また、ブロードバンド(高速・大容量のデータ通信)によって、パソコンが急速に普及していき、社会は溢あふれんばかりの情報に覆いつくされるようになった。それに伴い、インターネットを介したビジネスも盛んになっていく。

これまでは1つの地域や国で完結していたビジネスが、ほんのわずかな期間に世界規模でくり広げられるものになったのである。

ユニクロを運営するファーストリテイリングで考えてみよう。もともと同社は、中国地方にあった小売業に過ぎなかった。それが80年代から90年代にかけて急激に店舗の数を増やしていった。

最大の火付け役となった製品が、98年に一大ブームを巻き起こした同社のフリースだ。人件費の安い中国の工場で製品を大量生産することによって、ファッション性が高く、リーズナブルな商品を売ることに成功したのだ。

その頃までファーストリテイリングは日本国内でのみ知られている企業に過ぎなかった。だが、グローバル化の波に乗り、2001年のイギリス進出を機に、中国、台湾、韓国、シンガポール、オーストラリア、カナダ、アメリカ、ロシアと世界各国へ展開していく。

ファーストリテイリングの海外展開の背景には、国内市場が頭打ちになったというだけでなく、それに甘んじていれば海外から進出してくるH&M、ZARA、GAPといった大企業に市場を奪われてしまうという危機感もあったにちがいない。そのピンチを乗り越えるには、自分たちも海外へ打って出て会社の規模を大きくし、ライバルを蹴落とす必要があったのだ。

現在、ファーストリテイリングは2300店舗以上を持っているが、そのうちの6割にあたる約1500店が海外にある。社内公用語を英語にし、様々な働き方を導入し、積極的に外国人従業員を雇用している。