なぜこれほど相対的貧困率が高いままなのか
日本の完全失業率は、近年2〜3%台であるにもかかわらず、なぜこれほど相対的貧困率が高いのだろう。原因は、雇用形態にある。労働者に占める非正規雇用の人の割合が非常に大きいのだ。
現在、非正規労働者の比率は高止まりしていて、女性は2人に1人、男性は4人に1人となっている。平均収入を見れば、給与格差は明らかだ。・正規雇用者の平均収入=508万4000円・非正規雇用者の平均年収=197万6000円非正規雇用の社員は、正規雇用の社員と比べて、2分の1にも及ばない収入しかないのだ。
格差はたくさんの問題を引き起こす。君たちの身に置き換えてみれば、容易にわかるだろう。家にお金がなければ、学習塾で勉強をしたり、スポーツに励んだりすることが難しい。かといって生活を支えるためにアルバイトに励めば、プライベートの時間が削られ、学生のうちにやるべきことが疎(おろそ)かになる。
こうした人たちが、低収入で不安定な職業に就かざるをえなくなることがある。彼らは、経済的にも精神的にも苦しい生活を余儀なくされ、ストレスも膨らんでいく。結婚どころか、病気になっても病院へ行けないということも起こるかもしれない。
日本政府も、格差が多くの問題を引き起こすことを理解しており、解決すべき優先課題と捉え、これまでいくつもの対策を打ち出してきた。失業者を対象とした職業訓練や就職支援を行ったり、企業に正規雇用と非正規雇用の処遇格差を縮めることを求めたり、各種給付金で家計を支援したりしてきたのだ。
だが、おおよそ20年前から日本の相対的貧困率は横這いだ。なぜかわかるだろうか。国が行っている対策より、世の中のグローバル化、情報化のスピードの方が圧倒的に早く進んでいるからだ。