若い人たちに高い能力を求めるようになったのは当然

政治家が国会で議論をして新たな支援策を講じている間に、ビジネスの競争はどんどん激しく大規模なものになっている。だから、勝ち抜く人たちがいる一方で、大勢の人たちが社会からこぼれ落ちてしまっている。

現在の日本では、年収2500万円以上の富裕層の割合は、0・3%だ。一方で、年収200万円以下のワーキングプアと呼ばれる人たちはおおよそ5人に1人に当たる22・2%(令和2年<2020>民間給与実態統計調査)。それを見ただけで、勝者と敗者がくっきりと分かれていることがわかるだろう。

勝ち抜く人たちがいる一方で、大勢の人たちが社会からこぼれ落ちてしまっている(写真提供:Photo AC)

以前、僕が取材した大企業の社長は次のように語っていた。

「今の世の中はあっという間に勝ち負けが決まってしまいます。だから、多くの企業は自社で時間をかけて人材を育てるより、時間を金で買ってでも即戦力の人材を取り込もうとします。それは新入社員に対しても同じですね。能力がある子は、それを発揮して何千万円でも、何億円でも稼いでくれればいい」

こうした時代の中で、若い人たちが非常に高い能力を求められるようになったのは当然だ。

旧来型の社会システムでは、家具屋の店主が自分でつくった椅子を同じ町の知り合いに売れば良かった。だが、今、椅子の製造販売を事業にしようとすれば、人間工学や医学といった最先端の知識を結集して機能性を高め、どの国でも通じる高いファッション性を備えた椅子を開発し、世界中の市場でイケアのような海外ブランドとしのぎを削れるだけの営業力を備えなければならない。

現在、大きな売り上げを出している企業の大半は、そんなレベルでの世界規模の戦いをくり広げている。こうした企業が高い給与を払って正社員として雇いたいと思っているのはその戦力となれる人間だ。