世界で勝ち抜かなければ成功とは見なされない

ファーストリテイリングの成長のプロセスを見てみると、グローバル化した世界の中で企業が生き抜いていくことの大変さがわかるのではないか。逆に言えば、時代に適した成長を遂げられなかった企業は押しなべて苦境に追いやられているのである。

『君はなぜ、苦しいのか――人生を切り拓く、本当の社会学』(著:石井光太/中央公論新社)

同じことはファッション業界だけでなく、ありとあらゆる業界で起きており、もはや1つの地域、1つの国だけでビジネスが成り立つことはない。特定の市場だけにこだわっていれば、瞬く間にライバル企業に飲み込まれる運命にある。

かつては世界1位の性能を誇った日本の携帯電話が「ガラパゴス化」したことによって、あっという間にiPhone、GALAXY、それに中国の新興メーカーに取って代わられた。そうしたことが世界中の至るところで起きているのだ。

企業にしてみれば、世界の市場で勝ち抜かなければ成功とは見なされない状況は決して楽ではないはずだ。それでも、こうした潮流がとどまるところを知らないのは、それが人々に非常に高い利便性をもたらしているからだ。

グローバル化と情報化によって、人々はあらゆるものが簡単に手に入るようになった。

スーパーへ行けば世界中から輸入されてきた商品が大量に並べられ、通販サイトを利用すれば入手できないものなどほとんどない。格安航空券なら数万円で海外へ遊びに行けるし、オンラインチャットをつかえばあらゆる国の人とつながれる。海外から入ってくるファッションからジェンダーまで多様な価値観が、自身の凝り固まった価値観をいとも容易(たやす)く吹き飛ばしてくれる。

ビジネスとは人々の欲望をあおり、お金に換えていくものだ。市場の人々がそれを望む限り、企業は大変だろうと何だろうとそれに応えていかなければならない。

しかしながら、こうした新しい社会システムが人々にもたらしたのは利便性だけではなかった。市場がグローバル化したことによって、勝者と敗者がはっきりとし、「格差」という大きな不条理が引き起こされることになったのである。