「相手の表情が見える」アナログコミュニケーション

ファンの方々は、次回公演がイギリスの話ならロンドンの街並みやロンドンバス柄の絵葉書、庭園がテーマのショーなら花々の散りばめられた便箋など、作品の世界観に合ったものを選んで下さったり、作品に関する資料や情報をご教示下さったりと、細部までこだわり抜いたお手紙を送ってくれる。

時折ワープロ印刷の方もいらっしゃるが、ほぼほぼ「直筆」なので、筆跡を通して個性が伝わってくる。

『こう見えて元タカラジェンヌです 遅れてきた社会人篇』(著:天真みちる/左右社)

1通送るだけでもかなりの手間暇がかかっているお手紙は、その封筒の中に送り主のすべてが宿っており、何度か文通を重ねるうちに、それぞれの人となりも感じられるようになってくる。

それに加え、コロナ以前のタカラヅカでは、公演前と終演後、稽古前と後に、ファンの方が生徒をお見送り&お出迎えする「入り待ち・出待ち」というリアル対面イベントが日課だった。

自分を特に深く応援して下さっているファンの方は、入団当時から日常的にやり取りをしているので、10年以上かなりの頻度で顔を合わせている間柄である。

そんな、ほぼ「相手の表情が見える」アナログコミュニケーションで育った私は、「相手の表情が見えない(ことの多い)」デジタルコミュニケーションへ移行するのに、最初はかなり抵抗があった。