天童 歌手にとって乾燥は大敵。私は公演先に必ず加湿器や吸入器を持参しますし、こまめな水分補給も欠かしません。お風呂では毎日、シャワーを全開にして発声練習をするんですよ。浴槽にもお湯をためて、「あー」と声を出す。その後、お風呂用のカラオケで20分ほど歌います。

渡邊 いいですね! お風呂は湿度が高いうえに声がよく響くので、のどに負担がかからないトレーニングとして最適です。実はのどには、声帯以外にも声に関わる筋肉が左右5つずつあります。

私が「声筋(こえきん)」と呼ぶこの10の筋肉がシンクロしながら働くことで、高音から低音までのびやかに響くいい声が出せるのです。天童さんの巧みなこぶし回しも、声筋がよく鍛えられている証拠だと思います。

天童 お風呂で歌うのは、自分の持ち歌だけなんですけどね。うろ覚えの曲だと歌詞を考えながら歌うので、いまいちリラックスできなくて。(笑)

渡邊 おっしゃる通り、歌詞を意識せず歌える曲がいいんですよ。たとえば童謡とか。そういった曲を毎日お風呂で歌うことで、「今日はこの音が出にくいな」「息が続かない」など、小さな異変に気づくこともできます。

天童 たしかにそうかもしれません。先ほど先生がおっしゃっていた「深い呼吸」、これは少し自信があります。私は体が小さい割に昔から肺活量が多いんです。たぶん小中学生の頃、夏休みのたびに故郷・和歌山の川で真っ黒になるまで泳いでいたおかげじゃないでしょうか。

渡邊 水泳は呼吸と非常にリンクしますね。年齢にかかわらずできる運動ですから、今後機会があれば、トレーニングに取り入れるといいと思います。