天童 今は90歳になる母と一軒家で同居しているので、掃除などの家事や階段の上り下りが運動がわりになるでしょうか(笑)。それから母とよく一緒にするのが、「ばんざいストレッチ」です。

母は足を悪くしてから、テレビの前で座りっぱなしの日が増えてきて。それを見かけると、「はいお母さん、ばんざーい」って2人で大きく手を上げて、ストンと落とすのをくり返しています。私自身も、いい気分転換になるんです。

渡邊 腕を上げる動作は、ろっ骨を広げて肺にたっぷり空気が入るのを助けてくれます。また、一気に脱力することで首や肩の筋肉もリラックスできて声が出やすくなるので、ぜひこれからも続けてください。

天童 ステージでも、大きく手を広げて歌うと声がどーんと前に出やすいと実感します。ハリのある声を出すには、姿勢も重要なのですね。

渡邊 その通りです。女性は筋肉が少ないため猫背になりやすく、閉経後は女性ホルモンの減少により骨がもろくなるため、さらに背が丸くなってしまう。姿勢の悪さは呼吸が浅くなるだけではなく、胃を圧迫して胃酸の逆流も招きます。それが逆流性食道炎にまで進行すると「のどやけ」を起こし、声がかれてしまう危険もあるのです。

天童 わあ! それは怖い。私は幸い更年期の症状は重くなかったのですが、その時期に「声が変わった」という女性歌手の悩みはよく耳にします。

渡邊 声が低くなるのは、更年期の症状の1つです。女性ホルモンが減少して相対的に男性ホルモンが優位になることが原因。また、閉経後はコレステロール値が上がって血管が詰まりやすくなるため、声帯がむくんで声がかすれたり、出したい声がうまく出せないといったトラブルを招くことがあります。

<後編につづく