お湯も沸かしたことのなかった息子が

それでも。

翔大の成長が如実に表れていることがある。

それは、「料理」だ。

ひとは困った状況の中でこそ何か要領を得て、上達するもの。

食べることは毎日3回あるので、より美味しく、より満足できる食事にする工夫を重ね続けられるのだ。お湯も沸かしたことのなかった息子、口に入れて美味しいと思えるものを作れるようになるだなんて…。
それホントに美味しいかどうかはちょいと置いといてですね。

キャベツのざく切りポン酢、新手の照り焼き親子丼、かな?右奥は何だろう…(写真提供◎翔大くん 以下すべて)

そういえば私も18歳で横浜に一人暮らしした当初は、自分の自炊メシがあまりにも美味しくなさすぎて、ポトンと涙を落としながら食べていた。何回も不味いスパゲッティを食べているうちに、命の危険を感じてか、自ずと調理の腕前を上げざるを得なくなるのだ。

語学と料理は必要に迫られれば必ず上達するものと信じていたが、息子は見事にそれを証明してくれたと思う。

翔大が自炊するのは、練習オフや早上がりの時にスーパーで食材を買い込むことができた後の、数日間が多い。

1日に使える食費からお昼の学食やお弁当代を差し引くと、量も必要なのでさほど贅沢はできない。自炊すればたっぷり食べられるうえに、余ったら翌日のお弁当に詰めていけるので、倹約できた分を月に何度か外食しているようだ。

今はUber eatsがどこにでも料理を出前してくれる時代。実は東京のわたしの携帯から大阪の翔大の部屋に、いつでも店の料理やスーパーでの買い出しを玄関口まで送ることができる。決済は親の方なので、お金を持たせてなくても、遠く離れた息子に何かしら食べさせてやることはできるのである。

具合の悪い時でも、Uberでヨーグルトやお粥、うどん、飲料水や氷をコンビニから買って届けてもらうことだってできる。おお何と便利な世の中!

けれどやはり、毎回それなりのお金はかかってくるので、ウチではよほどの緊急事態にしか発動しない救済策だ。でも体調が悪い時にこちらから差し入れができるのは、イマドキだが本当に助かっている。