1年ぶりに実家に帰ると、散らかった汚部屋に母がポツンと座っていた――。15年ほど前、女王様キャラのSMネタでお茶の間を賑わせた芸人のにしおかすみこさん。彼女が家族との壮絶な日常を赤裸々に綴り話題を呼んでいます。いったいどんな生活なのでしょうか(構成=上田恵子 撮影=大河内禎)
一体何のサービスをお願いしたらいいのか
私が食事の支度をしている間、母は台所と居間を仕切っているカーテンから顔を出して、よく人の悪口を言います。「朝の5時から?」とは思います。人の悪口を言うタイプではなかったのになあと、寂しい気持ちになったりも。
でも母本人は、「悪口じゃない、ただの愚痴」。だとしたら、いっぱい愚痴りたいのかなあ、家でそれを聞くのは私しかいないなあ。あまりに悪口が止まらない時は、私自身が病んでしまう気がするので、居間から聞こえる母の声と、同じ音量でテンションの上がる音楽をスマホで流しながら、どっちもあんまり聞こえないみたいな状態にします。(笑)
母は、姉や私を働きながら育て、たくさんの愛を注いでくれました。ずっとずっと頑張ってきました。認知症になっても、姉を一番に心配し、変わりゆく自分のこともきっと理解している。一番しんどいのが母であることは、間違いありません。
「一人で抱え込んでないでプロに頼ってみたら? 介護認定も取っておいたほうがいいよ」と、介護経験のある友人が教えてくれました。地域包括支援センターには電話して、状況を聞いていただいたんです。
でも、頼るっていっても、うちのようなケースでは、一体何のサービスをお願いしたらいいんでしょう。寝たきりの状態だったり、介助なしでは入浴やトイレが難しいならともかく、母はそうではない。風呂に入りたくないだけの人の場合は、どうしたら……?
それに母は、知らない人が家に来るのも嫌がります。また荒れて揉めるのかと思うと、今は母を動かすのは気が重い。私がしんどくて介護認定を受けるステップを先送りにしてしまっています。