「あんたの文章を好きになってもらいなさい」

実家で同居を開始してから、母の言動や家族の様子をメモしています。日記など書いたこともなかったんですが、できるだけ正確に伝えたいと思って。それをウェブ上で連載することになったのが、2021年9月のこと。

丸1年が過ぎ、23年1月に『ポンコツ一家』という書籍として出版されました。

書名に「ポンコツ」という言葉を使ったことについて、最初は批判も覚悟していたんです。同じような状況で悩んでいる方や、支えているご家族の方を傷つけてしまったらどうしよう、と。でも今のところ批判ではなく、温かいコメントをたくさんいただいています。

ただ、家族からの反応は厳しいものでした。私はウェブ連載のことを家族には内緒にしていたのですが、連載初日に父が偶然見つけてしまい、母に伝えてしまいました。

夜の9時過ぎ、ブチ切れた母が私の部屋に怒鳴り込んできました。「全国民がうちの家族をバカ野郎って悪口言ってるって本当なの!?」と。大激怒です。

でも後日、母が「母80歳 二型糖尿病、姉48歳 歳をとったダウン症、父アル中、すみ無職」と書いたメモ用紙を差し出してきました。そして「書くならきっちり事実を書いて、あんたの文章を好きになってもらいなさい」と一言。

――いや、事実って。肝心の認知症が抜けているし、父は酔っぱらってはいてもアルコール依存症ではないし、私は無職ではない。(笑)

父は、メールで謝った私に、「お姉ちゃんとママのことは愛を持って書いてね。パパのことは何と書いてもいいから。みんなから愛されるものを書きなさい」と返信してくれました。しかし、私は48歳のそこそこ性根が曲がった大人です。父は連載で書かれることを意識していい人ぶったのでは、と疑っています。(笑)