(写真提供:Photo AC)
貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。現在もアルバイトを続けながら、「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。ヒオカさんの父は定職に就くことも、人と関係を築くこともできなかったそうで、苦しんでいる姿を見るたび、胸が痛かったという。第36回は「ラジオ」です。

やましげ校長とやしろ教頭

中学生の時、1年生の1学期で不登校になった私はしばらく部屋に引きこもっていた。
テレビを見ることも禁止され、部屋には本もなく、本当にやることがなかった。
そんな中、毎晩聴いていたのがラジオだった。

『SCHOOL OF LOCK!』という番組は、「ラジオの中の学校」がテーマで、当時のパーソナリティはやましげ校長(山崎樹範)とやしろ教頭(マンボウやしろ)。
毎晩毎晩かかさず聴いた。
軽快なトークやゲストとの掛け合いに心から笑うことができた。
そして何より心に残っているのが、やましげ校長とやしろ教頭が、リスナーと電話するコーナーだ。

リスナーが私と同世代のため、リスナーが抱える悩みはどれも共感するものばかり。
学校に行きたくない、学校が苦しい、というものもあった。
それに対し、やましげ校長とやしろ教頭はこれでもかというくらい、毎回真剣に向き合い、とことん話を聞き、うわべだけの言葉ではない、血の通った言葉をかけていた。
学校と家が世界のすべてで、その中に信頼できる大人はいなかった私にとって、中高生の悩みに真剣に向き合う大人がラジオの中にでもいる、という事実は大きかった。

さらに、流れてくる音楽はどれも心に刺さった。よく流れていたのは高橋優の曲。
多感で心の表面が全て粘膜のようだった10代の心と波長が合い、やり場のない悲しみや苦しみに歌が共鳴した。どうして!なんでこんなに苦しいんだ!生きづらいんだ!そんな感情を代弁してくれるような曲ばかりで、まっすぐに心を貫かれた。その時期の私を支え、癒してくれた音楽だった。