本能ではなく、知性で生きる「認知革命」

他の生き物は本能に従って生きていますが、人間は知性を使って本能で生きるのをやめたんですね。たとえばライオンはお腹が空いていれば直ちにウサギを食べてしまいますが、満腹だったら、前を通り過ぎても襲おうとしない。ところが人間は狩猟でいくらでもウサギを殺してしまう。「生きるために食べる」という本能をコントロールして、知性で生きるからそういう行動をとるんですね。

『伝説の校長講話――渋幕・渋渋は何を大切にしているのか』(著:田村哲夫/聞き手:古沢由紀子/中央公論新社)

ものごとの善し悪しも知性で決めますが、人間以外の生き物は本能で決めます。知性をきちんと育てないと人間は恐ろしい生き物になってしまうので、学校があるんですね。

人類の先祖は猿人といって600万年ほど前に生まれたらしいのですが、私たちホモサピエンスは30万年ぐらい前、アフリカのある場所に生まれました。知性を使うことの出発点は、ユヴァル・ノア・ハラリというイスラエルの歴史学者が『サピエンス全史』という本に書いています。

その後進化したホモサピエンスは、発達した脳みそを使って「認知革命」を行いました。外部から受けた刺激を概念化して脳の中にためた知識によって生きることを選んだのです。