(出典:『伝説の校長講話――渋幕・渋渋は何を大切にしているのか』より)

人間が人間らしくなった「大発見」

ダニエル・ブアスティンというアメリカの歴史家が『大発見』という本に、人間はあるものを発見して人間になったと書いています。何だと思いますか? 火。ああ、必ず出てくる答えの一つです。知性。それから言語、道具。なるほど。文字もあるね。文化。人間が生きるためにつくる社会の活動から生まれるすべてのものを文化というんですね。

どれもある程度あたっているかもしれない。でもブアスティンさんが書いたのは、「時間」です。人は時間というものを見つけ出して、人間らしくなった。文化も時間を使えるようになってから生まれました。

古代文明が興ったエジプトではナイル川が一年のある時期に必ず洪水を起こし、その後に肥沃な土地ができることから、その時期を予測することで農耕が発達し、高度な文明が築かれたと言われています。

ナイル川沿岸の人たちは、洪水の時期で時間を意識したのかもしれません。人間が時間を意識した証(あかし)は、暦です。研究者はまず、その文化が暦を持っていたかを調べるそうです。時間を意識することで、過去と現在と未来を視野に入れて考えることができるからです。

身近な話をすると、1週間後に定期試験があるとしたら準備をするのが、時間が分かっている人の行動ですね。試験があっても、いまが楽しいからテレビを見てゲームをしているのは、まだ人間らしくなっていない人で、そのことを意識した方がいいですね。さて、暦はどうやってつくったでしょう。そう、太陽を観測してつくりました。実は天体の観察をすることで地図もつくれたんですね。そこで、きょう紹介する人が出てきます。