ビニール袋に入れられ、色あせた通行手形を見ていると、友人から電話がかかってきた。通行手形のことを話すと、友人は、「昔の男は不倫があたりまえ。愛人とか妾とかいるものよ。お土産の通行手形は趣味で集めている人もいるから、ネットで販売したらいいわ」と、明るい声で言った。
「昔の男は不倫があたりまえ」ではないのだ。私は、頼まれると占い師に変身して、時々占いをしている。20代の時から、占いはどれくらい当たるのかを調べていて、あちこちの占い師に鑑定してもらっているうちに覚えてしまったのだ。今でも親しくしている占い師がいて、私と同じことを言っている。「中年以上の男性の不倫の相談が多い」ということだ。
私は、不倫に悩む男性にいつも言う。「子供には、迷惑がかからないようにしてくださいね」と。これは、占いの範囲を越えた、自分や回りの人たちの体験からの忠告なのである。
お土産の通行手形を発見したのと同じ押し入れに、アルバムを見つけた。開くと、父の親友の娘さんである秦野清美さん(仮名)の結婚式の写真だった。清美さんは、スタイルが良く、かなりの美人だった。
清美さんに対する私の父の罪を思い出し、お土産の通行手形をネットで販売することなど、とてもできないと思った。
彼女は30代で亡くなり、葬儀の後、私の母はその結婚式のアルバムを眺め、「綺麗ねぇ、綺麗ねぇ」と繰り返して言いながら、写真を撫ぜていた。私はその時、26歳だった。