「天罰がくだるかもよ」

介護と子育てで目が届かなかったとはいえ、ふつふつと怒りが込み上げる。夫は昔からメモ魔で、それゆえに今回墓穴を掘った。

スナップ写真のほか、貢いだ品物と金額のリスト、行動記録まである。ユウコの息子の成人式にブランドもののスーツをプレゼント!?このくだりで完全に血圧が上がりめまいがした。関係の深さはもはや推して知るべし。

私は証拠の山を居間中に並べてから、自室に戻り施錠しベッドに入った。翌日いつもより遅く居間に行くと、夫は平蜘蛛のように床にひれ伏し、すべてを認め謝罪。私は2人の関係を時系列で説明させた。夫はもごもご呟いていたが、老いてからのぼせた熱は急には冷めない。

それでも私は怒りのなかに余裕があった。「たぶん私にも落ち度があったと思うので、そのへんは忌憚のない言葉で言ってよ」と、穏やかに出た。ところが夫は下手に出るとつけあがるタイプだ。黙秘である。私は業を煮やし、「正直に話さなければ最悪の事態も免れない」と釘を刺した。

すると夫は観念したように、「アイツといるとなんか落ち着くんだよな~」と間抜けな声で抜け抜けと言った。想定外の言葉だった。さらに「言っていいかな、オレはきちんとした女よりズボラな女が性に合うんだワ。時間や身なり、約束ごとにうるさい女はもう耐えられん」と続けた。

私は努めて冷静を装い、「そっか、リョウカイ」と大声で応え、「いずれ天罰がくだるわよ」と後味の悪い言葉を浴びせてその場を収めた。老いれば気弱になって反省するだろうと期待したが、その後も2人の固い絆は手にとるようにわかった。