理由(1)体験から学ぶのがとても苦手

定型発達の子は、幼稚園や学校などに通ううちに、たとえば「先生の指示に従って全員で行動する」とはどういうことで、何をすればいいか、などといったことを、経験を通して学び、実行できるようになります。

しかし、生まれつき「多動」「こだわり」「雰囲気が読めない」といった特性がある発達障害の子は、その特性のままに振る舞ってしまうので、同じような経験が積めません。

『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル』(著:小嶋悠紀 イラスト・マンガ:かなしろにゃんこ。/講談社)

さらに、そもそも「まわりを見て学ぶ」のが難しい、というのも発達障害の特性です。

このため、ほかの子と同じような経験をしても、同じことを学び、身につけられるとは限らないのです。

ですから、発達障害がある子に、「ダメでしょ」「いけません」などの禁止語を用いて叱責しても、ほとんど意味がありません。

その子は、「何がよくて何が悪いか、学習できていない」状態なので、叱責されてもわけがわからず、混乱してしまいます。

「痛い思いをさせてわからせよう」「失敗もいい経験になる」と考えて大人が接しても、まったく意味がありません。イヤな思い出だけが残り、子どもが傷つきます。

そして傷ついた体験が積み重なり、二次障害に見舞われる子も出てきます。

発達障害がある子には、生活に必要なスキルを意識的に学習させ、実行してもらわなければいけません。だから支援が必要なのです。そして支援するときは、長い時間をかけて、くり返し「教える」「ほめる」ことが何よりも大切になります。