受刑者にコミュニケーションの授業

さて、ちょうどコロナのシーズンに入る前でした。その美容師の資格取得のために学んでいる人たち向けにコミュニケーションの授業をしてきました。

この美容科の授業は4月から始まり、費用は2年間で1人あたり200万円以上は掛かると言われています。

『それでは釈放前教育を始めます! 10年100回通い詰めた全国刑務所ワチャワチャ訪問記 』(著:竹中功/KADOKAWA)

「集団訓練」を受ける者は、全国の女子施設から選考されて集まってきた受刑者です。希望者は元々受刑態度などがいいと認められた人たちから選ばれます。受講者は10人ほどいました。

授業の日は美容師養成の稽古部屋で、道具類を少し片付けてもらい、テーブル類をスクール形式に変更してもらいました。

講義が始まる前、カバンからタブレットを出して、それをモニターにつなぐ際、頼んでもいないのに、受刑者が進んで手伝ってくれました。

男子刑務所で配線が上手くつながらなかった時、刑務官に「誰か!」と言われて、手を上げた受刑者が許可をもらって前にまで出てきてくれ、アダプターをつないでくれたことはありましたが、この女子刑務所は少し様子が違います。

脱いだジャケットを「預かります」と言ってハンガーに掛けてくれたり、モニターの位置もみんなが見えやすいところに移動させたり、私のタブレットもモニターと生徒の顔が見える所にセッティングしてくれました。

特に刑務官の許可をもらうわけでもありません。

「カバン、こちらに移動しておきます」なんてことにも気が回ります。

内心では「これが一般社会でできていたら、ここにはいないのになぁ」などと思いながら、怪訝な顔で刑務官を見ますと「ここは、それでいいんですよ」と返してくれました。

「お言葉に甘えて」という感じで準備を進めました。