究極の二択――コースから外れた「スタッフ職」か、先細る天下り先か

やや個人的な感情が出すぎていると感じながら、退官した後の天下りをどう考えているか、を尋ねた。

「初めに一言断っておきますが、将来の天下りを視野に入れて財務省を選んだわけではありません。年を重ねて子供の教育や住宅の確保が現実問題になると、天下り? なんてひとごとのように言っていられなくなるのは確かです」と苦笑を交えながら、現状を見据えてこう語った。

『事務次官という謎-霞が関の出世と人事』(著:岸宣仁/中央公論新社)

「出世コースから外れたスタッフ職(後述)で残るか、どこかへ天下るか二つに一つしかありません。天下ると言っても、次官の再就職でさえあれほど先細りしているのですから、私たちにあてがわれるのは、民間金融機関の顧問とか、小規模な会社の社外取締役ぐらいしかないんじゃないですか。

かつての大蔵省時代ならいざ知らず、現状ではまったく高望みはできませんし、その点、経産省などは多くの業界を抱えているから、彼らのほうが天下りは断然有利ですよ」

確かに、主計局(予算)、主税局(税金)という省内での超エリートコースはあるが、天下り先を抱えているかというと極めて限られる。