なんという裏切り

焼き鳥の串で腕でも突(つ)いてやろうかと思ったが大人げないので止め、口の中のものを言葉以外すべて飲み込んでから、「なぜそんなことをしたの?」と私は尋ねた。やや仏頂面だったと思う。

褒めてもらえると思っていた当人は仰天していた。どうやら朝、私が「冷蔵庫の中がいっぱいだ」と独り言(ご)ちたらしい。それを聞きつけ、代わりにやってあげたのだそうだ。なるほど、知り合って日が浅ければ「ありがとう」から始めて異論を唱える場面だろう。

そうしなかったのは、我々が復縁組だからだ。前に付き合っていたのは遥か昔。過去の記憶を辿ると、この男はやる時は良くも悪くも徹底的にやる。興が乗り、過剰にやりすぎる癖もある。ということは、今頃うちの冷蔵庫は空っぽだ。彼にとって「片づけた」は、「捨てた」と同義なのだから。