そんな馬場さんの92~93歳の日常に密着したドキュメンタリー映画が、この5月より公開される。タイトルは『幾春かけて老いゆかん歌人馬場あき子の日々』。
創作活動や仕事に熱意をもって取り組む一方で、お弟子さんたちとの会話からは、お笑い好きでチャーミングな一面も伝わってくる。「朝日歌壇」に寄せられる5000通ものハガキを超高速でめくり、一瞬で良し悪しを判断するその瞬発力は驚異的だ。
本誌のインタビューで、「80代になるまで、自分が老いているなんて思わなかった」と語った馬場さん。「肉体は衰えるけれど、魂はそのままね。老化が怖い人は、魂のために、足腰を鍛えておくといいわ」と笑う。
まだまだやりたいことがたくさんある、歌も詠み続けたい、とのこと。映画を観たあとは、背筋がピンと伸び、元気をもらえるに違いない。
馬場さんの1年を追ったドキュメンタリー映画『幾春かけて老いゆかん 歌人馬場あき子の日々』は5月27日より東京・新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開
馬場あき子
歌人
1928年東京生まれ。55年に初歌集『早笛』を刊行。77年に短歌結社「歌林の会」を設立、現在も歌誌『かりん』発行人を務める。『朝日新聞』「朝日歌壇」選者。『式子内親王』『鬼の研究』などの古典評論でも知られる。2019年に文化功労者。21年に全27歌集の1万首を収録した『馬場あき子全歌集』を刊行。馬場さんの1年を追ったドキュメンタリー映画『幾春かけて老いゆかん 歌人馬場あき子の日々』が5月27日より東京・新宿K's cinemaにて公開予定
「婦人公論」編集部
1916年(大正5年)、総合雑誌『中央公論』の女性版として創刊。女性の解放と自立を後押しする雑誌として歩み始める。平塚明子(らいてう)、与謝野晶子らも執筆。著名人の独占告白、女性の恋愛事件や性愛に関する記事は大正時代から受け継がれている。現在では夫婦、仕事、子育て、人づきあい、恋愛、性、健康など女性たちに身近で切実なテーマを掲載。2016年には創刊100周年を、2023年には通巻1600号を迎えた