絵本の中のオノマトペ
おもしろいことに、絵本でも、対象とする子どもの年齢層ごとに、オノマトペの使われ方に違いがある。0歳用の絵本は、『もこ もこもこ』のように、1ページにオノマトペを一つだけ印象深く使うものが目立つ。
文の中で使われるのではなく、オノマトペ単体である。子どもはひたすらオノマトペの音と絵の絶妙なマッチングを感覚的に楽しむ。
2歳半以降の幼児を対象にした絵本では、ことばが組み合わされ、簡単な句や文が使われるようになる。ここでのオノマトペは少し違った役目を担う。『しろくまちゃんのほっとけーき』は、文字どおり主人公のしろくまちゃんがホットケーキを作る絵本である。
どろっとしたタネがフライパンに落とされ、火が通っていくと気泡ができて音がしてくる。片側が焼けてきたらシュッとひっくり返され、フライパンにぺたんと着地。まだ生焼けだった側にも火が取ってきてふっくら、そしていい匂い。最後にフライ返しで投げてお皿に到着。おいしいホットケーキのできあがり。
一連の過程を表すと、長い、複雑な文章になるが、それでは1、2歳の乳児にはとても理解できない。でもオノマトペを重ねるとどうだろうか。
ぽたあん どろどろ ぴちぴちぴち ぷつぷつ しゅっ ぺたん ふくふく くんくんぽいっ
すでにこれらのオノマトペを知っている大人はもとより、知らなかった赤ちゃんにも、音、匂い、触感、火が通っておいしくなっていくさまが感じ取れる。
視覚、嗅覚、触覚など複数の感覚にまたがったホットケーキの変化の様子が一場面一場面、鮮やかに目に浮かぶ。単語や構文を理解できない赤ちゃんでも十分楽しめる。