ペチュニア、買ってきたときはふにゃふにゃのビニールポットに入って、てのひらに載るサイズだった。五号鉢に植え替えたときには、ぶかぶかの制服を着ている小学生みたいな感じだったけど、かき撫でて世話をするうちにぐんぐん大きくなって、とめどなく咲いてしぼみ、咲いてしぼみ、五号鉢からあふれ返っている。

ペチュニアをかき撫でながら、次に買ってきたのがチェリーセージ。赤と白の、小さい舌みたいな小さい花がぱらぱら咲く。

それから次に、ユーフォルビア・ダイヤモンドフロストを買ってきた。白点をまぶしつけたみたいな花(みたいな苞)が咲く。

あたしは、ほんとは、こういう小さい花の草花が好き。繊細で地味な花が好き。ペチュニアに手を伸ばさなかったのはそういうわけだ。ゼラニウムも薄色の花の小さいニオイゼラニウムの方が好きだし、アジサイはガクアジサイが好き。チューリップやバラの花より、道端のハルジオンやキュウリグサやヤブジラミ(セリ科の小花)が好き。

ふふふ、自分の生き方とはだいぶ違う、でもこっちの方がホントのあたしかもしれないなあと思いながら、花の小さい草を買う。そして思う、この「かき撫でつつ養う」が、どれだけ毎日の時間を食い、死ぬまで生きるための支えになってくれるか。

近所で取って食った巨大な草イチゴ

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米国人の夫の看取り、20余年住んだカリフォルニアから熊本に拠点を移したあたしの新たな生活が始まった。

週1回上京し大学で教える日々は多忙を極め、愛用するのはコンビニとサイゼリヤ。自宅には愛犬と植物の鉢植え多数。そこへ猫二匹までもが加わって……。襲い来るのは台風にコロナ。老いゆく体は悲鳴をあげる。一人の暮らしの自由と寂寥、60代もいよいよ半ばの体感を、小気味よく直截に書き記す、これぞ女たちのための〈言葉の道しるべ〉。