「立体星座」の効用

私の提案は、「星座」を使うことです。SF映画などで、地球に飛来してきた宇宙人がどこから来たのかと聞かれて、夜空の星を指さして「こと座から来ました」などと答えるシーンがあります。

星座は恒星が存在する方向や、恒星どうしの位置関係をかたまりごとに示すことができ、なおかつ、さまざまな事物になぞらえることでイメージがしやすいので地球では一定の需要がありますが、宇宙人との会話で使うにも、そこそこ有効ではないかと思っています。

もちろん、クリアすべき問題もたくさんあります。そもそも「星座」という概念を相手がもっているのかわかりません。「私たちの惑星にはこういう形に似たさそりという生きものがいまして、だからこの星の一群を、さそり座と呼んでいるのです」というところから一つ一つやっていかなくてはならないとしたら、かなり大変です。

なにより問題なのは、夜空に見える恒星の配置は、惑星によってまったく違うということです。地球の星座はあくまで、地球から見た星々を線で結んだものです。本来なら地球からの距離が違う星々の立体的な位置関係を、のっぺりと平面にしてしまったものです。

図1-1 4つの星の位置関係を表す立体星座<『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう』より>
図1-2 地球から見たA星、B星、C星<『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう』より>
図1-3 A星から見た太陽、B星、C星<『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう』より>

たとえば、図1‐1のように三角錐(すい)の位置関係になっている4つの星があるとします。正三角錐ではなく、側面は二等辺三角形になっています。

仮に、この三角錐の頂点に私たちの太陽があり、したがってほぼ同じ位置に地球があるとします。すると地球の私たちからは、三角錐の底面をつくる3つの星、A星、B星、C星は、正三角形の星座に見えます(図1‐2)。

ところが、A星から見ると、B星とC星と私たちの太陽は、縦長の二等辺三角形の星座に見えるわけです(図1‐3)。

これでは、A星を太陽にもつ惑星の住人が地球に来て夜空を見上げても、自分がどこから来たのかまったくわかりません。

つまり、ただ2次元の平面に落としこんで描いた星座ではなく、図1‐1のように3次元の空間にある点どうしを結んだ「立体星座」が必要ということです。