それは宇宙では普通ではない

「あなたは左右対称ですか?」

一瞬、あなたは翻訳機が訳し間違えたのかと思ったほどでした。もちろん、モニターの向こうの試験官には志願者の全身は見えないので聞いているわけですが、こんな質問から始めなくてはならないとは、宇宙人と面接をするのは大変です。

『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう』(著:高水裕一/講談社)

しかし、そう聞かれてあなたは、初めて気づきました。ステーションに来てからというもの、地球人からすれば奇妙キテレツな体形の人たちを見つづけてきましたが、驚いているばかりで、そこに一つのパターンがあるのを見落としていたようです。

試験会場を見渡せば、地球人と同じ左右対称の人もいれば、枝が好き勝手に伸びた木のようにまったく不規則な人も、なんらかの規則性はありそうだけど左右対称とは言い難い人もいます。

そして、地球人とは似ても似つかない姿でも、左右対称という意味では共通している人もかなりの割合でいるようです。たとえば、タコやイカのような形の人がそうです。単にランダムだと思えていた宇宙人の体形に、一つの見る基準を与えられたようにあなたは思いました。

そして、不思議にも思えてきました。宇宙人の体形が左右対称であることは、普通ではない。だったらどうして、地球の動物はほとんどが左右対称なのだろう?

この問いについて、私は物理学者なので生物のことは専門外ですが、自分なりに強い関心をもち、いろいろな本や資料を読んで調べてきました。大ざっぱな答えにはなりますが、いま、自分なりに考えていることを述べていきたいと思います。