これが現実なのだ

そんなぼろ家と、年老いた両親を見ると一気に現実に引き戻される。両親は60代後半だが、通常より10年くらい年老いるのが早い。50代から杖をつくほど足腰が悪く、病気も何度もしている。父は既に歯がなく、硬いものが一切食べられない。相変わらず不摂生の限りを尽くし、母に注意されると逆ギレする。

正直、父を見ていると、先はそんなに長くないだろう、と思う。親戚を見渡しても、みな長生きしないのだ。実際私が3歳の時には3人の祖父母は既に他界していた。両親を見ていると心が痛すぎて、直視できない。貧困が人をどれほど蝕むのかを突きつけられる。

実家を出て、10年になる。地元を離れて暮らしていると、ボロボロのあの家も、極度の貧困で不健康な生活を送る両親のことも、自分とは遠い現実のように感じることがある。バックグラウンドとは切り離されたところで、自分として生きていると錯覚する。でも、実家に帰ると、一瞬で我に返る。これが現実なのだ、と。

『死にそうだけど生きてます』(著:ヒオカ/CCCメディアハウス)

一方で、母親とは関係がいい。私の精神的支柱だ。実家にいる間、絶えず尽くしてくれた。私の健康や色んなことをここまで心配してくれる人は、この世に母だけだと思う。この家には、母に愛された思い出もしみ込んでいる。

どれだけ嫌な記憶のある地元でも、確かに愛されたし、楽しい瞬間もあった。そんな記憶の断片が、実家や地元には転がっている。