名画と言われる理由

たぶん映画や漫画でも同じでしょうが。小説もそうなんです。「あのシーン、良かったよね」と具体的に言いやすいと、すごく書評が書きやすい。あくまで書評家目線で申し訳ないのですが、でも、SNSで本の感想を書く時も同じなんです。

全体的に面白かった、なんか良かった、よりも。「こういうシーンを書いてほしかった!」と思う、何か引っかかるものがある小説のほうが、感想を書きやすい。取っ掛かりがあるシーンがあるからこそ感想を書きたい!とモチベーションが上がるからです。

たとえば、有名な映画『風と共に去りぬ』。あれがなぜ名画だと言われやすいのか。それは他ならぬ名場面があるからではないでしょうか。もっとも有名なラストシーン。何もかもを失い、呆然とするスカーレット。

しかし彼女が見つめるのは、夕日に照らされたタラの大地。空に赤く染まるスカーレットが呟くのは、この名台詞。

“Tomorrow is another day.”

「明日は明日の風が吹く」と訳されることも多い台詞です。このラストシーンのインパクトがとても大きいがゆえに、人々は『風と共に去りぬ』が良い映画だった!と思いやすいのです。

『名場面でわかる 刺さる小説の技術』(著:三宅香帆/中央公論新社)