良いシーンである理由
まずは『風と共に去りぬ』の先ほどのシーンを振り返ると「明日は明日の風が吹く」の名台詞とともに、スカーレットが赤く染まる夕焼けの空をバックに呟き、音楽が流れてきます。
この「どんな画のなかでその台詞を呟かせるか」とか「どんな音楽が流れてくるか」が演出部分に当たります。映画だとわかりやすいのですが、物語はあらすじだけで成り立っているわけではないのです。
あらすじの他にも、どんな場所でその台詞を言わせるのか、どんな盛り上げ方をするのかが、意外と重要だったりする。あらすじにばっちりハマる演出が出てきた時、観客は「なんて良いシーンなんだ!」とグッとくるのです。
小説の場合は、音楽も流せないし、映像もありません。それでも小説にも演出は存在します。そしてその演出如何(いかん)で感想の書きやすさも変われば、名場面になるかどうかも変わってくるのです。
※本稿は、『名場面でわかる 刺さる小説の技術』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『名場面でわかる 刺さる小説の技術』(著:三宅香帆/中央公論新社)
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