(撮影◎本社・奥西義和)
誰でも情報を発信できる時代だからこそ、創作の質に悩む方も多いのではないでしょうか。『バズる文章教室』で話題の書評家・三宅香帆さんいわく、文章のプロとアマチュアの違いは、「グッとくる名場面を書けるかどうか」とのこと。“勝てる”小説になるための名場面は、どのように作ればいいのでしょうか――。(撮影◎本社・奥西義和)

予想外とは何か?

「名場面に不可欠なふたつの要素」は、 (1)予想外の展開、(2)盛り上げ演出。この双方が必要なんですよ。今回はここをもう少し掘り下げてみます。たとえば太宰治の短編を見てみましょうか。

太宰治という作家は、『斜陽』『人間失格』といった長編小説の書き手として知られていますが、一方で短編小説や中編小説も多大なる作品を残しています。

太宰の短編に名作の多いこと!太宰の短編や中編は本当にびっくりするくらい面白いんですよ。テイストも作品によって異なり、少女小説もあればミステリもあり、自分語りもあればエンタメに振り切ったものもある。

短編・中編小説の書き手として日本でもっともすぐれているのは、実は太宰治ではないか? と私はよく思います。今もって読みやすく、キャッチーで、なにより面白い。

いわゆる「中二病」というイメージが強い太宰ですが、彼の短編や中編を読むと、エンターテイナーとして一流だったことがよくわかります。クリエイターの方にとっては、SSもとい短編の書き手としてもっとも参考になるひとりではないでしょうか。