ジャイアンツOBの3人だけが知る「ミスター」こと長嶋茂雄さんの魅力とは――(写真:『昭和ドロップ!』より)
WBCが大盛り上がりし、再び注目が集まっている野球界。現在、プロ野球はレギュラーシーズン真っ只中です。週刊誌『週刊ベースボール』で2020年から連載している『昭和ドロップ!』では、昭和に生まれ、昭和に育った元野球選手が令和の今、荒々しくも華やかだった昭和のプロ野球を愛あり笑いありで語り尽くしています。今回は定岡正二さん、篠塚和典さん、川口和久さんが登場。ジャイアンツOBの3人だけが知る「ミスター」こと長嶋茂雄さんの魅力とは――。

長嶋茂雄監督の魅力とは

──3人は定岡さんが1975年、長嶋監督1年目のドラフト1位、篠塚さんが翌1976年のドラフト1位。川口さんは1994年オフ、FA で長嶋監督2期目の巨人入りと、長嶋さんにラブコールされての巨人入りが共通点と思っています。

川口 俺は小学5年からエースピッチャーだったけど、チームの監督に「背番号3を着けさせてください」とお願いしたら「ピッチャーはダメ」と言われた記憶がある。長嶋さんの番号で、みんなのあこがれだからね。サダさん、俺らのガキのころはみんなそうですよね……。あれ、返事がないな……。サダさん、長嶋さんって背番号3でいいんですよね!(やや声でかめに)。

定岡 でかい声で確かめるなよ、そんなこと! 返事をしなかったのは何を話すか考えていただけ。でもさ、現役時代の長嶋さんは現実味がなかったんだ。小、中学校と野球部がなかったし、テレビもそんなに見なかった。すごい人というのは分かっていたけど、実在の人物というより、伝説の物語の登場人物みたいな気がしていた。

篠塚 僕もそう。小さいころプロ野球はそんなに見てなかったですからね。ただ、周りの大人が長嶋さん、長嶋さんと騒いでいたのは記憶にあります。出身が同じ千葉ですしね。

川口 2人とも家にテレビがなかったんですか!

定岡 バカヤロー! 当時は野球を見るより、やるほうが楽しかったんだ。

川口 子どものころからの長嶋信者じゃなかったんですね。俺にとっては、ずっと長嶋さんと王貞治さんは神様みたいなもんなんだけどな。サダさん、長嶋さんが現実になったのはいつですか。

定岡 リアル長嶋さんを見たときかな。世の中にこんな人がいるんだってびっくりした。伝説の人が初めて目の前に姿を現したんだからね。

川口 いつですか。

定岡 東京に入団発表で行ったとき(1974年オフ)。光り輝いていたよ。

川口 分かります! 長嶋さんってスポットライトがずっと当たっている感じですよね。

定岡 こっちが東京に初めて来たこともあったかな。飛行機も乗ったことなかったんで、舞い上がっていたのは確か。会見前日に東京に入ったんだけど、球団の人が外車で迎えに来てくれたのが、すごく思い出にあるんだ。

篠塚 外車に見えただけじゃないんですか。

定岡 バカヤ……、いや、そうかもね。車種も覚えてないしな。首都高を通っているときも、東京って高いところに道路があるんだなと思ったからね。ただ、車で、よみうりランドにあった合宿所に向かったんだけど、どんどん田舎になっていくんだ。「これも東京なの?」って感じだった。