近づいてくるウグイスの謎

野鳥の都市進出は現在も進行中である。それも予想外のところで、思わぬ鳥が都市環境を利用することがある。人のためにつくった様々な建造物が、鳥の目には子育てやねぐらなどに適した場所として見えるのであろう。鳥にとっては都市(人工)と自然の区分などはない。

店頭に並ぶリンゴも生ゴミとして捨てられたリンゴも、鳥にとっては同じリンゴである。食べられるものは食べる。それが野生動物の生き方である。実は、我々の想定をはるかに超えて、様々な鳥が都市環境を利用して生きている。

『都会の鳥の生態学――カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰』(著:唐沢 孝一/中公新書)

2022年1月下旬~2月、オミクロン株によるコロナ禍が再燃し、遠出の旅行や大勢での飲食の自粛が求められた。自宅でのテレワークが推奨され、身近な公園を散歩する人が増えてきた。たまたま筆者が近所の公園で冬の野鳥を探していたときのことであった。生け垣の中を移動するウグイスを見つけた。繁殖期の雄は「ホーホケキョ」と美声でさえずるが、冬季は「ジェッ、ジェッ」という地味な鳴き声ばかりで姿を見せない。しかも動きが速く写真に撮るのに苦労する鳥である。

ところが、そんなウグイスが生け垣から芝生に出てきた。久々のシャッターチャンスである。カメラを構え、その場にそっと腰を降ろしてピントを合わせた。地上のウグイスが、なんと、少しずつこちらに接近し、3m、2mと近づいてきたのである。