労働寄生は、子育て支援になる

ツバメの労働寄生は、ツバメの個体群全体から見ると幼鳥の死亡率を低減させているのではないだろうか。

筆者が観察した「昌ちゃんのツバメ」では、自分の巣に戻れなかった幼鳥が他のツバメの巣で「一宿一飯の恩義」に与あずかったとも考えられる。巣立ちの時期の幼鳥はバラバラになり、迷子になりやすい。成長の遅い雛はどうしても巣立ちが遅れてしまう。

また、巣立ったツバメの幼鳥がカラスに襲われ、家族が散り散りになることもしばしばである。街中の巣から郊外のヨシ原などへ生活の拠点を移動する際にも幼鳥は迷子になりやすい。

そんな孤児を他の親鳥が受け入れ、給餌することにより救済されることもあるだろう。雛にとっての「労働寄生」は、ツバメ個体群全体から見ると、「子育て支援」や「共同保育」としても機能していることになる。

 

※本稿は、『都会の鳥の生態学――カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰』(著:唐沢 孝一/中公新書)の一部を再編集したものです。


都会の鳥の生態学――カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰』(著:唐沢 孝一/中公新書)

都市を舞台に繰り広げられるカラスと猛禽類(オオタカやハヤブサ)のバトル、人と共存してきたスズメやツバメの栄枯盛衰、都市進出の著しいイソヒヨドリ――本書は、これら都会に生きる鳥たちの生態を通して、都市とは何か、都会人とは何か、変化する鳥と人との関係などを紹介する。都市環境に適応して生きる鳥たちのしたたかな生態を解説するとともに、巨大都市東京の変貌をひもとく、都市の自然誌でもある。