適度なストレスはなぜ生物の体を強くするのでしょうか――(提供:photoAC)
いわゆる「アンチエイジング」など、老化を防いで長生きすることを意図した研究が世界各地で進められています。そんな中、気鋭の分子生物学者ニクラス・ブレンボー氏は、22か国で翻訳が決まったベストセラー『寿命ハック』を通じて「ストレスはあった方が生物は長生きする」という見地を科学的に示しました。その代表的な例としてポリフェノールやサウナが挙げられるそうで――。

人間には無害でも実は有毒な植物たち

他の多くの生物と同様に、植物も食べられるより生きることを望んでいる。しかし植物は、自分を食べようとするものから走って逃げることができない。となると、残された選択肢は闘うことだけだ。

いくつかの植物は恐ろしげなとげや鉄のように堅い殻、針状の葉を進化させた。しかし、ほとんどの植物に共通する戦法は化学兵器の使用だ。もちろん、わたしたち人間も彼らの敵側リストに載っている。

現代では植物性の食事を摂るのは簡単だが、石器時代の人は自分が何を食べているかをよく知っておく必要があった。なぜなら、信じられないほど多くの植物が何らかの毒を持っているからだ。

例えば野生のアーモンド(苦扁桃仁)はきわめて有毒なシアン化合物(アミグダリン:分解により青酸を生じる)を含んでいる。また、生のカシューナッツにはツタウルシと同じ毒が含まれている(スーパーマーケットで売られているものは無毒化されているのでご安心を)。

人間には無害で(実際、わたしたちはよく食べるが)他の動物には有毒な植物も多い。

例えばチョコレートや他のカカオ製品はネコやイヌには毒になる。また、わたしたちが食べている植物の大半はいくらか武器を隠し持っている。パイナップルを食べた後、唇や舌に少し痛みを感じたことはないだろうか? そうなるのは、パイナップルにタンパク質分解酵素が含まれているからだ。

そのためパイナップルを使うと肉が柔らかくなるが、その肉が自分だったら、あまりうれしくないだろう。

パイナップルを食べるとすぐ、その酵素は口の中のタンパク質を分解し、実質的に食べた者を消化し始める。パイナップルがこの酵素で闘うには、人間は大きすぎるが、小動物なら撃退できるだろう。