路上でクルミの破片を食べるハシボソガラスの群れ(写真・唐沢孝一)
人以外の生物にとっては棲みにくいはずの都市に、近年多くの野鳥が進出しています。東京都心や千葉県市川市を中心に、半世紀以上にわたって都市鳥を観察してきたNPO法人自然観察大学学長の唐沢孝一さんが分析した、人と鳥との関係性の変化とは。人の居住地区まで進出するカラスは、人の行動を利用して食料を得ているとのことで――。

ハシボソガラスの知恵

クルミは硬くてカラスの嘴をもってしても割れない。そこでカラスは、「上空から落とす」「車に轢かせる」などの方法で割って食べる。

上空から河原の石や舗装道路などに落として割るカラスは全国各地で観察されている。車に轢かせて割るカラスは、仙台市内の自動車教習場や東北大学へ向かう途中の道で観察されて話題になった。

筆者も何ヵ所かで観察したことがある。クルミを割って食べるのはいずれもハシボソガラスによる単独行動であった。

ところが、2021年11月、長野県諏訪湖で観察したハシボソガラスは単独ではなかった。

湖畔のT字路交差点付近の電線に15~16羽が、道路に面したフェンスにも5~6羽が止まり、道行く車の流れを見下ろしている。

『都会の鳥の生態学――カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰』(著:唐沢 孝一/中公新書)