ストレスとうつ病で生じる脳内炎症
ドーパミンは前頭前野を含む脳の広範囲ではたらく神経修飾物質で、やる気や報酬に結び付いた行動に伴って放出されます。何らかのトラブルで急性ストレスを受けたときにもドーパミンを放出して、前頭前野などの活動を高めてトラブルに積極的に対処する仕組みが脳にはあると考えられます。
しかし、慢性ストレスを受けると、内側前頭前野へドーパミンを放出する細胞の活動が抑制されてしまいます。
私たちはその抑制過程で、プロスタグランジン(PG)という炎症に関わる免疫系の分子が重要な役割を果たしていることを明らかにしてきました。
慢性ストレスにより内側前頭前野の樹状突起が退縮する現象にも炎症が関わっていると考え、研究を進めています。
ウイルスや細菌に感染すると、さまざまな免疫系の細胞や分子がはたらき、それらの異物を攻撃して排除します。
そのときに発熱や炎症が起きます。体の中で壊れた細胞があると、ほかの細胞に悪影響を及ぼします。その壊れた細胞を免疫系が排除するときにも炎症が起きます。
炎症がうつ病に関係していることは、1980年代から指摘されてきました。うつ病の患者さ んでは、脳内で炎症が起きており、炎症に関わる物質の濃度も変化していると報告されています。
また、関節リウマチなどの慢性炎症性疾患の患者さんはうつ病を併発する確率が高くなります。しかし、ストレスと脳内炎症、うつ病に因果関係があるのか、よく分かっていません。