古屋敷さん「うつ病の患者さんの脳では、ある部分の体積が縮小している」と言いますが――(写真提供:Photo AC)
うつ病、ADHDなどの発達障害、PTSD、統合失調症、双極性障害…多くの現代人を苦しめる「心の病」は、脳のちょっとした変化から生まれます。誰にでも起こりうるこの病は、何が原因で、どのようなメカニズムで生じるのでしょうか。様々な角度から精神疾患の解明に挑むのは研究者・古屋敷智之さん。その古屋敷さんいわく「うつ病の患者さんの脳では、ある部分の体積が縮小している」そうで――。

「急性ストレス」と「慢性ストレス」では違った変化がおきる

慢性ストレスを与えたマウスの脳では、何が起きているのでしょうか。

うつ病の患者さんの脳では、海馬とともに内側前頭前野の一部の体積が縮小していることが知られています。

ストレスを与えたマウスの内側前頭前野の神経細胞を調べてみると、急性ストレスと慢性ストレスでは正反対の変化が起きていました。

1日10分のいじめを一度だけ与える急性ストレスでは樹状突起が増えたのに対して、1日10分のいじめを 10日間与え続けるという慢性ストレスを受けた感受性群では逆に退縮していたのです。

ただし、慢性ストレスを受けても抵抗性群では樹状突起の退縮は起きていません。

急性ストレスによって、脳深部の中脳(腹側被蓋野/ふくそくひがいや)から前頭前野へドーパミンを放出する神経細胞が活性化します。その作用で樹状突起が増えたと考えられます。