3度の骨折を経験しながら復活を遂げた「トウカイテイオー」。その姿は、見るものに大きな感動を与えた。美しい流星と静かな瞳を持つ、この不屈の名馬が駆けぬけた栄光と挫折のドラマとは。今回『トウカイテイオー伝説』から、『ROUNDERS』編集長の治郎丸敬之さんの寄稿文を紹介します。その治郎丸さん「トウカイテイオーは繋が長く、弾むような歩様の馬の代表例としてよく挙げられる」と言いますが――。
なぜトウカイテイオーはここまでの名馬になれたのか
トウカイテイオーの馬体は至ってシンプルである。
シュッとした流星を伴うハンサムな顔立ち、澄んだ瞳、首差しの伸びから手肢の長さ、前後軀のバランスの良さなど、どのパーツを取り上げても水準以上であることは間違いない。
ただ特筆すべき馬体かというとそうではない。460〜470キロ台の馬体重は、現代ではやや小柄な部類に入るが、当時においては標準的な馬体の大きさであった。
特別に大きくも小さくもない、平均点の高いバランスの取れた好馬体、というのがトウカイテイオーの馬体評である。
それではなぜトウカイテイオーはここまでの名馬になれたのか。
私の見解としては、父シンボリルドルフ、さらに言うとシンボリルドルフの母の父スピードシンボリから人智を超越した気高さや精神性を受け継いでいたからである。
もう少し具体的に言うと、サラブレッドの本能としての他馬よりも速く走って、少しでも前に出るという気持ちの強さやプライドの高さということ。
だから彼らは肉体の限界を超えて走るのであって、馬体からだけでは推し測れない強さを持っているのだ。