産駒たちに伝わり難い、関節部分の柔らかさと強さ
繋に関して言えば、長くて寝すぎてもいけないし、短くて立ちすぎてもいけない、平均的な長さと角度の繫がもっとも良い。
これは走る・走らないというよりは、脚が丈夫な馬を選ぶコツだと考えてもらっても良い。
それにしても、トウカイテイオーの血がここまでつながらなかったのは不思議である。
例えばメジロマックイーンが母の父として、オルフェーヴルやゴールドシップ、タイセイレジェンドを通して現代競馬に影響を与えているのに対し、トウカイテイオーの姿はほとんどどこにも見えなくなってしまった。
気高さや精神性の高さは仕方ないとしても、繋をはじめとした関節部分の柔らかさと強さは産駒たちに伝わり難いものなのだろう。
馬体のサイズや骨格、筋肉の質や量は遺伝しやすいのに対し、部品と部品をつなぎ合わせて動かす動的な部分は繊細なのである。
いつかトウカイテイオーに恩返しをしたいと思ってやってきたが、私にできるのはこうして語ることであり、トウカイテイオーらしさが伝わった馬体の馬が登場することを最後まであきらめずに待つことぐらいか。
(「ROUNDERS」編集長 治郎丸敬之)
※本稿は、『トウカイテイオー伝説 日本競馬の常識を覆した不屈の帝王』(星海社)の一部を再編集したものです。
『トウカイテイオー伝説 日本競馬の常識を覆した不屈の帝王』(著:小川隆行・ウマフリ/星海社)
通算成績12戦9勝。成績だけを見ると父の七冠には及ばずも、3度の骨折を経験しながら復活を遂げた姿は、見るものに大きな感動を与えた。美しい流星と静かな瞳を持つ、この不屈の名馬が駆けぬけた栄光と挫折のドラマを振り返る。