1ヵ月近く1人で世界を巡りました。ノルウェー、イギリス、ドイツ、イタリア、最後にアメリカへ。英語はできないし、ガイドも高いから雇えません。でも現地の人に「ここに行きたい」と絵を描いてみせると、だいたい伝わるんですよ。
ロンドンではミュージカルの『ヘアー』を観て、音楽とファッションの聖地・カーナビーストリートやキングスロードにも行って。思い思いの格好をした若い人たちが広場に集まっていました。中には赤ちゃんを抱いた人も。みんな明るくて、まさにピースという雰囲気でね。
一方、アメリカでは危険だから絶対に夜はホテルから出るなと忠告されていました。だけど夜じゃないとアンダーグラウンドな世界は見られない。一晩中あちこち回って音楽を聴き、夜明けにホテルに帰ってきていました。
ある女性シンガーなんて、観客に背中を向け、ロングヘアーをなびかせて歌うんですよ。「聴きたくなきゃ聴かなくていいよ。私は自分のために歌うんだから」という感じで。
おかげで日本に帰ってから何の迷いもなく描き始めることができました。トキワ荘が第1の青春だとしたら、『ファイヤー!』は第2の青春ですね。