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「蘭貫学院に行ったのか!」
三公さんが眼を見開いて、唇を曲げるようにしてちょっと驚いていた。
「そうなんです」
「あそこは、まぁ野球部はあるが甲子園を目指すようなものじゃないだろう。君は、確かショートだったよな」
「そうです」
びっくりした。そこまで知っていたんだ三公さん。
「中々守備センスがあったはずだしバッティングも良かったんだから、それこそ豊萬(ほうまん)高校でもいきゃあ甲子園も夢じゃなかったろうに」
苦笑いしてしまった。
豊萬高校は埼玉でも有名な強豪校だ。でも、あそこに行ってもレギュラーが取れるかどうかわかんなかったと思う。
「実は、ヘルニアになっちゃって、野球は辞めたんです」
三公さんは今度は顔を顰(しか)めた。そうか、ってすまなそうな顔をした。
「そりゃあ、若いのにな。残念だったな」
残念だった。
最初はただ腰を痛めただけかなって思ったんだけど、手の指とか痺(しび)れていたりして。先生に言われて、ちゃんと検査したら、そうだった。
「でも、普通の動きは全然大丈夫です。よっぽど重いものを持つとか激しく動くとか、そんなことしない限りは」
「まぁ、うちの仕事にそれはないな」
ここの仕事は受付と、やり方を知らない初めての人へのマシンの説明。あとは、ネットから抜けたボールの回収とかボールやバットの掃除。その辺は得意だ。得意っていうか、やりたい。野球の道具に触っているだけでもいい。