時代を逆行する戦略
オープン当時のミカドは、大会をすればそのスタッフのファンが集まってくるようなカリスマ店員がいたせいもあってか、ゲーマーたちの間ではよく知られたお店だった。大会の頻度も高く、ここにしかない古いゲームもたくさんあった。
当時の最新ゲームではなく、あくまで古いもので勝負したこと―生き残っているポイントのひとつ目がこれだ。
新しいものはどこにでもある。競合すると、結局は価格の戦いになる。だから最初からそこで勝負するつもりはなかった。コンテンツは古くとも、企画次第で盛り上げることができるのだ。
でも、それだけでは長く生き残ることはできない。
現にオープン後、ゆっくりとインカム(英語の「income」。業界用語で、ゲーム機に投入された金額。つまり「売上」のこと)は低迷していった。
では、次になにがポイントとなったのか? それは2011年以降に始めた、ストリーミング配信と連続イベントだ。
ミカドが新宿にオープンした時期(2006年)は、ちょうどYouTube やニコニコ動画が始まった時期に近い。この時期には無料で動画を配信することはまだ珍しく、僕自身もあまり積極的ではなかった。
1990年代後半に格ゲー(対戦格闘ゲーム)ブームが終わり、入れ替わるように音ゲー(音楽・リズムゲーム)ブームが来た。さらに2000年代からネットワーク型のカードを使ったゲームが現れ、ゲーセンにもネットワークが組まれるようになるあたりまでは、まだ希望があった。
業界の雲行きが怪しくなったのは、2010年を過ぎてからだ。
メーカーがネットワークシステムでゲーセンに課金をする額が大きくなり、さらに2011年の東日本大震災。
これをきっかけに、小さなゲーセンはバタバタと倒れていった。