「ゲーセン」が忘れ去られてしまうのは大きな文化的損失
しかし、コロナで受けたゲームセンター業界の傷はいまだ深く、ミカドも含めて今後どうなっていくのか予想がつかない。なにも手を打たなければ、街のゲームセンターはこのままどんどん消えていくだろう。
これだけの支援者がいるのに、ゲーセンのことが忘れ去られてしまうのだとしたら、それは大きな文化的損失といっても過言ではない。
1980年代のインベーダーブームのなかで幼少期を過ごし、90年代の対戦格闘ブームに青春をささげ、それからずっと業界にいる僕にとって、ミカドのこれまでとゲームセンターの歴史は同じ重みがある。
2011年の震災、20年のコロナ、激動の時代のなかで、僕らは知恵を振り絞ってなんとか生き抜いてきた。
僕個人とお店と、ゲーム業界、社会情勢、日本の状況、それらは複雑にからみ合っている。
時代という大きな流れとリンクする小さな文化は、日本よりも実は海外で大きな影響力と価値を持っていたりする。
それを知ってもらうことで、文化を記録し保存する意義も見えてくるはずだ。
※本稿は、『ゲーセン戦記-ミカド店長が見たアーケードゲームの半世紀』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『ゲーセン戦記-ミカド店長が見たアーケードゲームの半世紀』(著:池田稔・ナカガワヒロユキ/中央公論新社)
「ゲーマーの聖地」として国内外で名を知られる「ゲーセンミカド」。中小店が苦境に立たされる中、多彩なラインナップと企画力で愛され続けている。同店の池田店長が、数々の名作を振り返りながら現場のリアルを語る。『ゼビウス』『グラディウス』などシューティングブームの流行から、『ストリートファイターⅡ』『バーチャファイター2』など格ゲーの隆盛、経営の試行錯誤や業界への提言まで、ゲーセンの歴史と未来を描いた一冊。