網野善彦先生が主張していたこと

この本で網野先生が主張されたことは、中世日本には世俗の権力とは無縁の、庶民によるコミュニティがあったのだ、というものです。

その空間において、人々は自由であり、争いを起こさなかった。つまり平和を尊重していた。お寺、もしくは神社などは、しばしば仏や神の名において、そうした空間(学問的にはアジール、と呼ばれる)の庇護者として機能していました。

ですが、そうした空間を破壊していく権力が出現します。それこそが戦国大名です。

戦国大名は、自分の領土に、自由と平和を享受する人々が存在することを許しませんでした。領国の全ての人に対し、戦国大名権力に屈服することを要求したのです。

大名の強大な支配は人々を戦争に駆り立て、日常生活を拘束しました。人々の自由と平和は、否定されざるを得なくなった、というストーリーが語られました。