伊東潤さんの構想

東国に、織田信長に対抗する一大勢力を築く。大名ベースでその可能性に言及したのが、歴史小説家の伊東潤さんです。

伊東さんの構想は次のようなものです。

上杉謙信は後継者を指名しないまま、急逝した。謙信には実子がなく、上杉家を継ぐべき養子が二人いた。一人は謙信の姉の子である景勝。もう一人は北条氏康の子で、景勝の妹を妻とする景虎。二人は跡目を巡って激しく戦い、上杉家中は真っ二つに割れ、抗争は一年にわたって続いた。

やがて、武田勝頼が景勝支持を打ち出したことにより、形勢が定まった。景虎は討たれ、景勝が上杉の当主となった。

だが、勝頼が景虎を支持していたらどうなったか。

景虎の実兄である北条氏政は、景虎を支援していた。とすると、武田が景虎を支持して、上杉景虎がたてば、東国には「北条・武田・上杉」の新三国同盟が生まれ、版図は関東全域から中部、北陸に及ぶ。

穀物の採れる関東平野の生産力、日本海交易の経済力、武田騎馬隊の軍事力が統合される。天下取りに邁進する織田信長に対抗できるとすれば、この連合しかない。

伊東さんの壮大な構想に、ぼくはなるほど、とうなずくばかりでした。