小龍包(ショーロンポー)(写真提供:栖来ひかり)
タピオカミルクティーや台湾カステラなど、日本で一世を風靡した台湾スイーツをはじめ、私たちの身近に存在する台湾文化。台湾在住で日本人の栖来ひかりさんが両国の文化を比較したエッセイ『日台万華鏡』が話題を呼んでいます。そんな栖来さんが、台湾料理の代表ともいえる小籠包についてルーツを探ってみると、意外な事実が見えてきたそうで――。

小籠包はどこの料理?

台湾に行ったらなに食べたい?と日本人に聞けば、「小籠包」と「マンゴーかき氷」がおそらく上位に入るのではないだろうか。日本人観光客が多く訪れる永康街(ヨンカンジェ)に行けば、ミシュランの星を獲得し今や小籠包の代名詞ともいえる鼎泰豊(ディンタイフォン)本店や、シーズン時のマンゴーかき氷のお店に長蛇の行列ができる。

しかし厳密にいえば「小籠包」は台湾料理ではないかもしれない……と言えば、驚く日本人は多いのではないか?台湾を代表するレストランの看板料理が「台湾料理」ではないとは。では小籠包とはどこの料理なのか?

近年になって中国料理の世界では「八大菜系」という区分ができ、地方や料理法・食材などによって中華料理をおおまかに8つの系統に分けている。この8つに何料理が入るかは諸説あるものの、一般的には日本でもよく知られる広東料理や四川料理もそのひとつで、ほかに山東、江蘇、浙江、安徽、福建、湖南の料理(菜〈ツァイ〉という)が挙げられる。

小籠包の名店・鼎泰豊はこのなかで、上海や蘇州・杭州をルーツとした料理「江浙菜」に分類され、小籠包もそこに含まれる料理というのが台湾では一般的だ。ではなぜ小籠包が台湾を代表する食べ物になったのか、それは台湾の歴史と関係が深い。