地方に目を転じたら

そもそも、この連載は、老後に住むところがなくなるのを防ぐために、アラ還の今から後半生を過ごす家を考えよう、という趣旨で始めました。当初は都内で賃貸に住むか、家(マンション)を買うか、といった視点だけで考えていましたが、地方に目を転じたら視野が開けました。いま1都3県、とりわけ東京都内に住んでいる人にとっては、地方都市への転出は選び放題です。というのも、定住促進策で、こうした「お試し移住」があるからです(さすがに神奈川県の箱根町にまで制度があるのは驚きでしたが)。しかも、空き家問題の解消を目的に、移住にあたって古家をリフォームする場合は、補助金を出してくれる自治体が多いようです(もちろん箱根町も!)。

このマンションは築30年近いが、玄関扉は管理組合で新しいタイプに交換済みだ。鍵穴が2カ所あるダブルロックの玄関扉だが、新聞受けはついたまま。オートロックでないマンションの場合、こんなふうに、各戸の玄関ドアに新聞受けがついていることが多い。ちなみに、玄関扉や窓サッシなどは共用部分なので、個別に替えてはいけない。管理組合全体で工事する必要がある。写真提供◎筆者

前々回(連載18回目)、地方の新築マンションを出会ったばかりで一目惚れした若者に喩え、昔からの憧れの高嶺の花(都内の中古)と比較しましたが、それに倣うならば、箱根は、むかーし、付き合っていた彼氏ですね。久しぶりに再会したら、やっぱり落ち着くなあ、この人のこと好きだったなあ、と思い出す感じです。若い頃は、愛は、国境は越えても県境は越えないので、泣く泣くお別れしたのですが、住む場所はどこでも選べるアラ還になって思い出した昔の彼が、なんと独身だった、手の届く人だってわかった、ようなものでしょう(喩えが複雑過ぎます? 苦笑)。

実は、箱根のことは、ずっと気になっていました(昔の彼氏みたいに)。というのも、NHKの番組『あさイチ』〈1〉で昨秋、ウエブサイト『婦人公論.jp』でも連載中の紫苑さんらの「おひとりさまライフ」が紹介されました。その番組内で紹介された「先輩おひとりさま女性」3人のうちの1人が、箱根町在住だったのです。元別荘のマンションを安く購入し、自宅にして住んでいる、とかいう話でした(記憶があいまいでごめんなさい)。そんなことができるんだろうか、おひとりさまでも買える価格帯のマンションが箱根なんかにあるんだろうかと、興味津々だったのでした。

そして、箱根で確かめてみて、びっくり!です。その物件の安さといったら!!

ある独身男性は、トライアルステイで箱根が気に入り、古いマンションを100~200万円で購入し、フルリフォームして住んでいるそうです。内装を新築同様にリフォームした費用も含め、トータルで500万円かからなかったとのこと。その人はいま、神奈川県内の職場まで毎日、車で通勤しているそうです。500万円ですよ! 500万円!! 500万円で箱根に自宅マンションをゲットできた、だなんて! 今まで私があれこれ迷い、考えていた都内のリフォームマンションの約10分の1の価格です! あまりの違いに、都内で買うのが馬鹿馬鹿しく思えてきます。


〈1〉2022年11月9日放送の「40代女性の3人に1人! おひとりさまライフのイマとこれから」