「僕の絵のように、見ただけで怖いのは親切な怖さ（笑）。目に見えない怖さには勝てないです」（楳図さん）／「楳図さんのマンガを読むと、人間としての根源的な感情が刺激されます」（酒井さん）
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楳図　怖さを感じるのは、人間の本能の大事な部分。生きるうえで、そのシグナルを受けとれるかどうかはとても重要です。今、一番危ないのは、そこがなくなりつつあるところ。恐怖には絵にできないものもあって、たとえば、放射能や新型コロナウイルスですね。目に見えないから、警戒も予防もできなかった。

酒井　見えない恐怖に翻弄されました。

楳図　僕の絵のように、見ただけで怖いのは親切な怖さ（笑）。目に見えない怖さには勝てないです。科学が進歩したり人間が自然をいじくったりすると、復讐というか自然界の防御作用が起きると思う。そこが怖い。今後、そういうことが増えていくでしょうね。

酒井　楳図さんのマンガを読むと、人間としての根源的な感情が刺激されます。恐怖マンガも、「怖い！　ギャーッ」という感覚が快感にも通じていますし、幼稚園児が主人公のギャグマンガ『まことちゃん』は、原初的刺激による笑いで、違う世界に連れていってくれます。

楳図　これまで僕は、ストーリーを作るのに苦労してきました。だからといって、自分以外の作品や映画を参考にすると、それをどう否定するかを考えることになる。その状態から新しいものを作ることはとっても難しいんですね。

それならば、全部一から新しく考えたほうがいい。自分が今まで描かなかったものを。そのうえで、さらに前の作品と真逆のことをやる。真面目な作品の後は面白い作品を、という感じですね。そうすると、どんどん新しいものになっていく。それが、僕の法則です。