酒井 ご両親は、楳図さんがマンガを描くことを応援してくださっていたのですか?

楳図 全然! 父は、学校の先生になれって言っていましたから。でも僕が大学に落ちてしまったから、奈良県の地方紙『大和タイムス(現・奈良新聞)』に僕を売り込んで、そこで絵物語「吉野のあらし」を連載することになったんですよ。

酒井 お父様が売り込みを!?

楳図 とにかく、お金を稼ぐ手段を、と思ったんじゃないかな。

酒井 お母様はどんな方だったのですか?

楳図 母は、「小さい子に鉛筆持たせたら何を描くんだろう」と思って、まだ7ヵ月の僕で実験をしたらしいです。「丸ってこう描くんだよ」と描いてみせたら、僕が真似したのだとか。そうやって教えているうちに、僕のほうから、あれ描け、これ描けと言い出して。困った母は、字を教えることに切り替えたそうです。

酒井 子どもの才能を引き出したんですね。楳図さんの作品に出てくる母親には強さを感じます。ある日突然、小学校ごと別の時空へと送られてしまう『漂流教室』の主人公の母親も、息子を絶対的に信じている。お母様が投影されているのかな、と。

楳図 確かに、強い母親だったとは言えるね。食べる物がなくても、苦しいなんていう言葉を一度も聞いたことなかったし。

酒井 この先、挑戦してみたいことはありますか?

楳図 それがなかなか見つかりません。最近、ちょっと天気に負けている感じがするので、気候のいいサンフランシスコで暮らすのもいいかな、とか。

酒井 小学生時代からのファンとしては、この先もぜひ新しい作品を拝見したいです!


楳図かずお大美術展公式サイト

会期:2023.06.10-08.06
会場:名古屋 テレピアホール(名古屋市東区東桜1-14-25 テレピア2F)